2024年3月31日
2024年3月31日
残念ながら、医療とカネは切っても切り離せない。
どんな組織も、カネがなければ存続しないのである。
特に、ICUは労働集約型の部門であり、ちょっとした人材の欠員であっという間に機能しなくなる可能性が高く、病院側の視点では扱いにくい部門であることは間違いない。
ではなぜ病院はリスクを抱えてまでICUを持つのか?
ICUは病院にとってどれくらいの価値があるのだろうか?
特定集中治療管理加算1、ICU10床の施設が、平均滞在日数4日で年間600人入室、うち加算取得率90%、入院費1日平均3000点と仮定する。
→加算(3億69万円)+入院費(7200万円)
ここから人件費、材料費、光熱費などの施設費用を引く。
人件費:
医師8名、看護師40名、薬剤師2名、栄養士1名(臨床工学技士とリハビリスタッフも専属で必要だが省く)で、年収をそれぞれ、1400万円、540万円、600万円、480万円と仮定する。
→3億44,80万円
材料費:
集中治療室ではこの材料費がかなり高そう
低く見積もっても売上の1/3。
→1億
施設費用:
最近値上がりした電気代や、システム導入にかかる費用や、改修費やら。
これも推定だが、売上の1/5と推定。
→6000万円
ざっと1億弱ぐらいの損失である。
(実際には、他の加算や出来高分も含まれるので赤字にはならない)
医療が高度になるほど、病院経営的には赤字になることが指摘されており(→https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/life-sciences-and-healthcare/articles/hc/hc-kyuseiki-iryo.html)、”公立病院は補助金、私立病院は経営努力で吸収”している。
とまあICUがあるだけでは病院のメリットがない事がわかる。
むしろ+αによって経営的に損させない価値を提供せねばならない。
・他科に変わって集中治療を遂行することで他科の労働コストを下げる
(この結果、手術数を増やす)
・患者の集中治療管理を焦げ付かさせず、効率的なベッド管理を行う
・RRSで未然にICU入室を予防することで、ICUベッド加算の回転を効率化する
・患者と主治医のコンフリクトに介入する
・他院への評価を改善させ紹介を増やす
・科同士の仲をと取り持つ
・コメディカルのバーンアウトを予防する
…思いつくのはこのあたりか。
・働き方改革の名のもとに、病院が集約されていくのは間違いない。ICUはいざというときに即応するべく、ある程度余剰人員を常に抱えておく必要があると思う(なお、余剰人員の平時時間はRRS対応や主治医と代わって家族やコメディカルとのコミュニケーション、人材教育などに費やされる)。とはいえ、実際にICU医師が集約化されるかといえば、別問題。特に地方。地方の小規模病院は経営が怪しくなり、補助金頼りの中規模〜公立病院が生き残っていくであろうが、財政基盤が弱い地方病院ではICUの強みを活かせないままの赤字部門となりうる上に、病院側に人事採用枠を含む人事権がないため、ICU医を集約化するという方針とはアンマッチである。そうなると、地域病院のICUは…。
・では大学病院はどうか?これまた、ICUの構造と相性が悪い。各科の思想(ICUは自分たちで見るべき、的な)や大学病院特有の科の縦割り構造や多数の医師がいて顔の見えにくい状況のため、ICU医師が中心になって診療を進めていくということがやりにくい。結果、ICU医としてのモチベーションを保つことが難しい(もちろん上手くいっている大学もあるはず)。
・問題は、施設側だけではない。ICUチームを集約しようにも、ICU医師は労働時間が長く成長が遅い科であり(モニターの数字合わせだけなら簡単で、2年で専門医という称号は得られるものの)、教育的指導医そのものも少ない。このため、集約しようにもチームの成熟はすぐに起こらない。
・とまあ、長期的には集中治療領域に対する悲観的な見方をしている訳だが、自分の考えが間違いであるということについて、学会見解が知りたいところ。
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