新人アテンディングへ送る経験則
どれも素晴らしい経験則であり、コメントとともに紹介。
1. 脈圧の狭いショックに対するPOCUS
”脈圧が30mmHg未満のショックでは、緊急にPOCUSを行い、RV/LV不全、閉塞性ショック、または重度の血液量減少を確認する必要がある。”
2. 持続的Hypovolemia = 動的LVOToの可能性
”輸液負荷に一過性に反応する 持続的な Hypovolemia患者を診察した場合、第一に出血の有無を確認する。第二に、単にHypovolemiaであるとと考えるのではなく、動的な左室流出路閉塞、心室間相互作用(intracavitary gradients)、拡張機能障害について考える。持続的な輸液反応性を治療するために15Lの輸液を行うことは、おそらく正しい行動ではない。”
コメント:これまた心エコーが大事なことがよくわかる。見た目に騙されて収縮性心外膜縁でした、みたいな落とし穴にハマらないようにこの3つは鑑別に上げたい。
3. 同じ質問を2回する看護師
”看護師が(あるいは看護師でなくても)同じ質問を二度してきた場合、あなたの判断が疑われていると思わないでください。”
コメント:この10の経験則において2つ優れた経験則をあげるとすれば、そのうちの1つ。同じ質問を2回された場合、自分の判断が間違っているか、コミュニケーション方法が間違っているかの2つを必ず再検討すべきである。これができない集中治療科指導医は、2 challenge ruleに対する理解が欠落しておりガチで危機感持ったほうが良い(年齢や職位によっては権威勾配でchallengeすることさえためらわれるので、自覚がなければ一生改善しない可能性あり。裏を返せば、年食ってchallengeされているうちは良い指導医だということかもしれない)。4. 敗血症性ショックは血液分布異常性ショックと同じではない
コメント:病像としてはとても紛らわしい現場によく遭遇するが、最終的に全てのショックはDistributive shockを併発する。
5. 未診断の敗血症 がICUで診断に至ることは稀である
コメント:”ショックです”とプレゼンされたら、”で、ソースは?”と切り返すのが普通なので当然といえば当然である。敗血症は病像がわかりやすいので、飛びつかれやすい。よって未診断で入室することは稀というのはご尤も。全てのショックはショックソースへの介入を目指せ。
6. 乳酸値の上昇は輸液(必要性)を意味しない
コメント: これだけでは内容不足で、この後ろにもう1行付け加えるべき。”しかし、他科はこれを理解していないことを、集中治療医はよく理解しておくこと。”
7. 安定した心停止蘇生患者など存在しない
”彼らはただ死亡しただけである。彼らは、あなたの診療科/病院で最も死に近い患者である。患者を死に至らしめた病気はまだ進行中であり、時間が重要。診断を優先し、十分なアクセス(動脈+静脈)を確保し、確実な治療を行う”
コメント:心停止は表現型。プロブレムを表現型にしない、というのは指導医になる前に叩き込まれているはずなので、指導医向けの経験則としては疑問が残る。
8. 心停止患者は同時に神経、外傷、心臓(にプロブレムを持つ)の患者である
”心停止後の患者は同時に、1)心停止、2)蘇生後脳症、3)胸部外傷(誰かが30分ほど胸を押しつぶした)のプロブレムを持つ。心停止後にCTスキャンを行う場合、PANスキャンの閾値は低い(頭部、胸部、腹部)。”
コメント:これはあるあるで、よく胸部外傷がプロブレムから落ちやすい。心臓外科術後の患者では特に注意が必要。
9.POCUSが輸液を増やすように指示するなら、おそらく間違った使い方をしている
コメント:POCUSは反応性を示唆してくれて、輸液の有害性を確認するツールである。決して輸液必要性は指示しない。まあ、IVCが◯◯なので輸液しました、というフレーズは研修医時代に誰もが通る道である。
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