特定集中治療管理加算1を新規取得するまでのハードル
【施設要件】
2)特定集中治療室管理を行うにふさわしい専用の特定集中治療室を有しており、当該治療室の 広さは、内法による測定で、1床当たり20m²以上である。
10)原則として、当該治療室内はバイオクリーンルームである
→まず、この20m^2以上など箱が確保できていないと足切りである。
→5年以上の専任2名。特に質や資格は問われない。救命センター等に5年いれば、つまり最低でも医師8年目以降ということになる。
→まず1つ目の難関。看護師を1:2配置する必要がある。手練れのICU看護師は貴重な存在である。取得するなら数の視点として、10床の施設で2交代制とすると、ICU看護師だけで40名程必要になる。
→2つ目の難関。おそらく、NPまたは急性重症患者看護師が想定されている(混乱していたが、集中治療認証看護師は集中治療学会が、急性重症患者看護師は日本看護協会が認定しており別物である)。NPで集中専従している人はほぼいないと思う(顔と名前を3人思いつくが少数であろう)が、急性重症患者看護師は2023年3月時点で全国に383名である。特定集中治療管理加算1を取得している施設が2019年時点で194施設。
→3つ目の難関。10床で控えめにCHDF2台、ECMO1台をOver night使用するとなると、実質バックアップオンコールMEを確保する必要があり、そうなるとMEだけで15人〜は確保する必要がある。(透析や心臓外科・循環器内科の強度にもよるが、日勤10人[オペ2、カテ2、ICU1、透析4、バックアップ1]、明け1人、休み3人、オンコール1人)。ベテランでICUのことをよくわかっているMEは、急変のときにも絶対その場に居てほしい職種なのは間違いない。しかし、ハードなICUをやりたいと思ってくれるだろうか?
→ICUに入る経路としては、術後・救急・急変の3つである。8割以上を維持するためには手術か救急が頑張る施設でなければならない。必然、麻酔科や救急科とペアを組む施設が多いのではなかろうか。麻酔医や救急医を、ICU専従用に別途確保しなければならない。
【コメント】
・施設要件の難関は継続的な人材確保である。なにもないところから新規で設立しようとすると、絶望しかない。まあ194施設もあればいいんじゃないか、ということかもしれない。
・顔が思い浮かぶ急性重症患者看護師の多くが優秀なのは間違いないが、じゃあICUに1人必須でしょというと、よくわからない。データベース研究では、配置したほうが良いアウトカムだという報告はある(J Crit Care . 2017 Oct:41:209-215.)が、適正な人数や質など具体的な事を教えてくれる訳では無い。まあ集中専門医しかり、アイデンティティに関わることであるし今後も前向き研究は行われることは決して無いであろう。話は変わるが、専門看護師というのは、加算を生み出す貴重な存在である。地方で1名しか持っていない、となると、その人が病院に給与交渉しようもんなら、もはや病院は言いなりになるしかないんじゃない?
・臨床工学技士の業界は全くわからないが、医者以上に狭い社会らしく、噂は広がりやすいようだ。ICU好きで、当直もこなします、的な人は希少種らしい(個人的な見解では、人工心肺系と透析系に2分されており、ECMOや透析が混在するICU系は変わり者と見られているのかもしれない)。また、良くも悪くも、工学技士長の雰囲気によって風土が形成されやすいので、どれだけ理解を得られるかのキーパーソンの1人になりそう。
・というわけで、管理加算1を取得するには、院長を含めたトップ陣の理解とバックアップ+専門看護師の確保+臨床工学技士長と看護部長の理解という壁を乗り越えなければならない。その上、維持し続けるためには+看護師を含むコメディカルの継続的教育+自分も含めたバーンアウトによる退職予防…という壁を乗り越えないといけない。自分が医師8年目でこれをマネージできたかといえば、無理だったであろう(多分今も)。
【参考文献】
https://www.nurse.or.jp › 2023/02 › cns10
特定集中治療管理加算1を取得している施設が2019年時点で194施設:https://www.jsicm.org/publication/pdf/2021_20230222_JSICM_sksch.pdf
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