集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

他科に「アルブミンを投与して下さい」と言われたら?

2022年3月8日  2022年3月8日 

【回答】 

心を無にして投与する。


【参考文献】

アルブミンについての10の神話

(https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-022-06655-8)

1.アルブミンは血管内から間質に漏れ、浮腫の原因となる→No

2.アルブミンは人工コロイドに比べて血管内容量増加に効果がない→No

3.アルブミン投与は急性腎不全を予防する→特定の状況でYes

孫引きで、アルブミンが4g/dl未満でCre0.9mg/dl程度のオフポンプCABG患者を対象にしたRCTでは、術前にアルブミンに投与したほうが術後AKIが少ないというRCTが取り上げられている(Anesthesiology . 2016 May;124(5):1001-11.、全文未読)。この論文に対するエディトリアルが”Albumin Supplementation as a Therapeutic Strategy in Cardiac Surgery: Useful Tool or Expensive Hobby?”(Anesthesiology . 2016 May;124(5):983-5. )とタイトルも強烈ながら、中身も"interesting"連発で、結局は腎臓の保護効果は多因子性である可能性がある、とにべもない。

4.アルブミンは敗血症の生存率を向上させる→たぶん。でも不確実

5.アルブミンは利尿剤の効果を向上させる→Yes、だが一時的

6.アルブミン投与は腎代替療法中の体液除去を改善する→Yes

孫引きで、アルブミン<3 g/dlのAKIまたは末期腎臓病患者が、透析開始時に25%アルブミン100 mL投与で血圧低値が回避されたというRCTあり (Crit Care . 2021 Jan 6;25(1):18.)。この論文だけでプラクティスが変わることも無く、さらなる研究に期待という範疇にとどまる(Clin J Am Soc Nephrol . 2021 May 8;16(5):820-828.)。なお今の所、この論文発表後に腎臓内科医に透析開始前にアルブミン入れて下さいと言われた記憶がない。

7.アルブミンは肝硬変の死亡率を下げる→Yes、ただし特定のグループだけ

8.アルブミンは外傷性脳損傷(TBI)の死亡率を増加させる。→たぶん。でも確かではない

9.低アルブミン血症を補正するためのアルブミン投与は、全死亡率を下げる→No、ぜんぜん違う

10.アルブミン投与は塩化ナトリウムの負荷を増加させる→可能性はあるが、関係ない。



【コメント】

・アルブミン投与して下さい、の前には「術後創傷治癒が悪いんで、」「栄養状態が悪いんで、」「アルブミン値が◯◯(多くはここに2未満の数字が入る)なんで、」「ボリュームが足りていないんで、」のフレーズが95%な気がする。

・病院の利益が、とか医療費が、とかそもそも過剰輸液になっているじゃん、とかいろいろな視点はあるものの、そもそも、自分が居なくとも、アルブミンを投与するというプラクティスは実行されるのである。真に重要な患者の利益を守るために譲らないことも重要ではあるが、他科と喧嘩することなく妥協できる部分は妥協するというのも重要だと思う。人をみて、アルブミンの有害性についてディスカッションすることはあるが、その相手もだいたいは上から命令されているだけであったりする。そういう背景をひっくるめて、心を無にするのである。

・アルブミンを使用すると想定するケースは図1の推奨の通りとほぼ同意見だが、”晶質液での大量輸液後に蘇生輸液を行う場合”であってもほとんどアルブミンを使用しない。アルブミン+ラシックスも数例使用したことがある程度で、効果はまちまちだという印象。今はほぼ行わない(当時、Bossに珍しい事するね、と言われたということもあるが)。

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