鼻腔MRSAの除菌
【話題にしようと思う論文】
Humphreys H. Can we do better in controlling and preventing methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) in the intensive care unit (ICU)?. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2008;27(6):409-413.
【内容】
個室隔離:観察研究では有用そう。RCTない。
ムピロシン塗布:全ての患者にルーチンでの塗布は推奨されない。MRSAを予防できるが、耐性獲得率が上昇。耐性菌への選択肢が少なくなる
手指衛生:コンプライアンスの遵守率がキモ(最低でも70%〜、40%を切るとMRSA獲得がお大幅増加)。ハンドジェルの消費量を測定が1つの指標。
環境衛生:患者への感染率との相関なし。
PCRによる早期発見:有用かもしれない。RCTが待たれる。
【本文】
・MRSA を制御し予防するための戦略には、症例を特定するためのスクリーニングによる積極的な監視、抗生物質スチュワードシップ、脱コロニーゼーションまたは MRSAの根絶、隔離、手指衛生などの適切な一般感染予防策、十分な数のスタッフなどがある
【コメント】
・ちょっと古いレビューで、その後Reduce-MRSA試験など大規模研究が行われている。
→http://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/ikyoku/20170905Iwai.pdf
・結局、最も効果があるのは古典的な手指衛生。自分の手は洗わないが患者の除菌をする、というのも不思議な話である。外科医は手術室での清潔操作には厳しいが、ICUでの接触感染予防については驚くほど寛容であることが多い(データはないのでエビデンスレベルは極めて低い)。コンプライアンス遵守率を上げる&高い数字を維持するというのはかなり労力がいる。
・短期的な除菌は得られても長期的には耐性菌で苦しむことになると、かえって有害であろう。現状ルーチン除菌はしていないし、さらなる研究結果が出るまではする予定もない。ルーチンで除菌している施設があるのだろうか?DPC研究で割り出せる?
・VAPを疑った時にMRSAが関連しているかどうか、鼻腔MRSAを確認することで判断するという研究もあるようだ。メタ解析上はVAPの診断に対して感度40.3%、特異度93.7%、PPV35.7%、NPV94.8%であった(Clin Infect Dis . 2018 Jun 18;67(1):1-7.)。このメタ解析に組み入れられた研究の81.8%が後ろ向き研究であり、肺炎の分類の研究間のばらつき、肺炎診断の定義が必ずしも明確でない、鼻腔スワブ採取のタイミングと培養のタイミング、PCRか培養かなど異質性が高いものであった。私見として、MRSAのPCRは提出不能な環境であり、このプラクティスは行っていない。

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