集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

集中治療医は緩和ケアとコミュニケーションが専門

2022年5月29日  2022年5月29日 

 【論文】

1)Curtis JR, Higginson IJ, White DB. Integrating palliative care into the ICU: a lasting and developing legacy [published online ahead of print, 2022 May 16]. Intensive Care Med

2)Kentish-Barnes N, Jensen HI, Curtis JR. The legacy of the interprofessional family meeting [published online ahead of print, 2022 May 5]. Intensive Care Med. 2022;10.1007/s00134-022-06718-w.

【内容】

1)ICU緩和ケアにおいて将来への3つの提言:

1.ICUと緩和ケアの専門家が、ICUで質の高いケアを提供するために必要なスキルやトレーニングについて、コンセンサスを得て広く普及させる必要がある。医師、看護師、その他を含むICUの臨床家は、ICUに関連する主要な緩和ケアスキルの訓練と経験が必要である。一方、緩和ケアの臨床家は集中治療医学の訓練と経験を必要とし、ICUの文化を理解する必要がある。

2.専門的緩和ケアから最も恩恵を受けるであろう患者および家族を特定する効率的かつ効果的な方法を特定し、実施する必要がある。ICUで緩和ケアを必要とするすべての患者や家族を専門医が診るような専門緩和ケアの人材は、決して存在しない。

3.プライマリー緩和ケアと専門的緩和ケアの提供と統合は、形態ではなく、機能に焦点を当てるべきである。効果的なチームワークが達成されないと、ICUとPCのチーム間の二重の努力やミスコミュニケーション、対立により、全体が部分の合計よりも少なくなってしまう危険性がある。



2)家族とのコミュニケーションについて

・患者の家族は誠実でわかりやすくかつタイムリーな情報を期待している 。家族は、共感、快適さ、近さ、安心感、そして臨床家が自分たちの希望を共有していることを感じていることを評価する 。一方で、傾聴に十分な時間を割けない、臨床家間で情報の一貫性がない、臨床家が必要と判断したときだけ面談を行う、臨床家が感情を持つことに抵抗があるなど、効果的なコミュニケーションや機会損失を引き起こす障害も研究によって示されている。

・家族と臨床家のコミュニケーションの改善は、臨床家の経験やICUの倫理的風土の改善にも役立つ

・面会における看護師の役割は過小評価されるべきではない。実際、看護師は頻繁に家族と親密な関係を築き、ベッドサイドで家族が話した内容から家族の懸念について有益な洞察を得られることが多い



【コメント】

・集中治療医は、患者の適切な緩和ケアのために、症状の評価とマネジメント能力およびコミュニケーション能力が要求される。結果として、集中治療医は緩和ケアとコミュニケーション(と蘇生)が専門となった人種である。

・緩和ケアの専門医はよほどマンパワーが無い限り、ICUで一緒に働くことは少ないのではないだろうか。緩和が専門の医師がいればぜひとも教えを請いながら一緒に診療してみたいと思う。緩和ケアについては、”苦痛というバイタルをモニタリングしながら、どんな状態であっても常に緩和を意識せよ”という、師匠の言葉を思い出す。

・他科の主治医が家族とコミュニケーションが上手くいっていないな、と思った時になかなか介入し難いのはもどかしくある。コミュニケーションが上手でない科は、そういう力学が働いているので仕方がないといえば仕方がない。コミュニケーション能力については、テクニカルな部分は伸ばすことができるのでまだまだ努力したい。

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