集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

流行に逆らうということは困難である

2022年6月26日  2023年5月13日 

【論文】

Robin ED. Death by pulmonary artery flow-directed catheter. Time for a moratorium?. Chest. 1987;92(4):727-731. 

【内容】

・論文発表当時の全米でICU入室患者の約40%に肺動脈カテーテルが挿入されている背景がある中、肺動脈カテーテルによる合併症で年間1万〜1万5千人が死亡していると推定されるため、”安全性と転帰の改善を示すランダム化比較試験が実施されるまで、PACの使用を一時停止する”ことを求めるEditorial

・使用に関して、学会は早急に利害関係に無い委員を招集して(公共機関や政府関係者、肺動脈カテーテルに関連しない分野の臨床医、疫学者を含む)パネルを開催することを提案している、のだが…

・”パネルの開催は実現しそうだろうか?ほとんどありえないだろう。医学は体系的な誤りを正すのに時間がかかることで知られている。肺動脈カテーテルの大量使用は、医学に導入され、大勢の患者に害や死をもたらす系統的な誤りである、「異端流行」の一形態である。異例ともいえる疫病は、なかなか封じ込められない”として流行がおさまらないであろうことを自嘲気味にコメントしている

【コメント】

・肺動脈カテーテルは2013年のメタ解析あたりを境にほとんど廃れた医療機器となった。しかしながら完全に存在意義を失ったわけではなく、ごく一部の限られた患者を対象に細々と生き残っている(施設によっては全例ルーチンで術中に挿入されてくるところもあるが。誰が値を解釈するのだろう?)

・医師は容易に利益相反を起こしてしまう。40年近く前から、先人たちも、容易に変わらない現状に苦悩していたと思うと、何故か笑えてくる。

・流行の最中にいると、果たして有害なのか有益なのか見えにくいことがあるのは要注意。ブームがきて有用じゃね?→否定する論文が出て廃れる→信念ある人々により細々と生き残る→テクノロジーの進歩が追いついて再ブーム→やっぱり否定→細々と生き残る…というのが医療の繰り返す歴史の様だ。

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