【多職種カンファレンスをなぜ行うか?】
・ICUの回診をして方針を共有するにも関わらず、多職種で集まって別途カンファレンスを行う必要がなぜあるのか?
→答えは、”ギャップが存在するから”である。
・ギャップとは、医学的予後↔本人や家族の希望が解離している、とか、主治医の予後予測と集中治療科の予後予測が解離している、とかである。もう少し具体的に踏み込むと、このギャップの争点は3つの無益性に集約される(生理学的無益性、質的無益性、量的無益性)。このギャップが、スタッフのジレンマを生んだ時、多職種カンファレンスが開催される。
・このギャップを埋めるのが、多職種カンファレンスの目的である。
・司会者はこの前提を理解しておかないと、司会中に迷った時に正しい道へ戻れなくなる。
【多職種カンファレンス司会の進め方】
・カンファ前の準備が重要である。予習すべきポイントは2点。
1.実際に進行する前に重要なのは、どこがギャップなのか?を把握することから始まる。何がギャップで開催されたのか、何故ギャップが形成されたのか、などを事前に検討しておく。また、本人の価値観やQOLを阻害している要因は、患者と対話することで事前に十分聴取しておく。場合によっては、これらの作業のみで、ギャップが埋まり、多職種カンファレンスが開催されないことすらある。
2.予後予測に関して、疫学データや文献的根拠を見ておく。正確な予後予測は集中治療医の腕の見せどころである。予後予測の前提が崩れると、議論がひっくり返る羽目になる。なお、予後予測には幅があってOKである。
・実際の進め方(私見):
1.多職種カンファレンスの目的を明確にする
目的を提示しない会議は全て必ず、参加する価値がなく時間を奪うだけの存在である
多職種カンファレンスの目的はそもそもギャップを埋めることである。
が、司会者はストレート163Kmは投げる必要はない。
「予後推定に解離があるからです」とか言わない
「予後のすり合わせと、より良い未来についてできることを検討することです」でよい
2. 4分割表に基づく。この際、各項目のエレメントは必ずすり合わせておく。
何事も背景知識を共有しなければ、議論が噛み合わない。
医学的なこと→医学的予後(最良の経過、最悪の経過、最も起こりうる経過の3パターンをトラジェクトリーカーブに基づいて図示)
本人の希望・価値観→絶対にクリアしたい目標(死ぬよりも辛い状況)、生きがいや価値観
QOL→緩和治療は平行して行われているか、意思決定に影響を与えていないか確認
周囲の状況→本人の希望とギャップが発生していないかを確認
上記エレメントはルーチンですり合わせる(または共有する)
ギャップが発生している部分は特に入念にすり合わせる
この際の注意点は、左上の議論が十分になされてから右上の議論に移る、ことである。
問題点を全て列挙してから、もう一度左上の話に戻る場合、非常にテンポが悪い。
議論がとんだ場合は、ギャップを明確にすることに戻り、他の要素の議論に流れさせない。
また、問題解決のための何ができるのか?というTodoを議論する。
目的がギャップを埋めること、なので当然である。
例えば、他科と集中治療科との予後推定でギャップが発生している場合は、
どうすれば最良の経過を辿れるか?何か見落としていないことはないか?である。
何も見落としていないが、主治医はかなり高望みした最良の経過を想定していることがある
だいたい「僕の経験では…」のパターン。すかさずTime limited trialへと持ち込む。
喧嘩する必要はない。やんわり疫学データを提示しつつ、
「では○日後にこうなっていれば、先生の言う通りでしょうし、
ああなっていれば私の言う経過が近いのかもしれませんね…」といって幅をもたせる。
前述の通り、予後予測というのはそもそも幅があってOKである。
参加者が「ああ、ここにギャップがあるんだなー」とわかってくれるだけでOKである。
3. 他に各職種に言い残したことや欠けていることがないかを確認。
本人の価値観やQOL、家族の希望についてはコメディカルが情報を持っていることが多い。
鉄板なのは、予後の話であればリハビリスタッフに身体機能予後を、
QOLの話であれば看護師に寝られているか、褥瘡はないか、抑制されてないか、
あとはMSWに経済的な話や退院後の行き先の話など。
4. まとめを述べる。
カンファレンスの目的が達成されたかを確認
今日決まったTodoをおさらいする
次回、どうなったら多職種カンファレンスを再び開くのか、いつ開く見込みなのかを決める
5.解散後、ギャップを発生させているキーパーソンへすぐアクセスする
具体的には、 主治医に参加して真摯な議論をしてくれたことを感謝する
理想的には、即解決可能なTodoについては事前に実行しておき、
感謝を伝えた際、こなしたTodoについて報告する
多職種カンファレンスの司会は緊張感半端ないが、終わって一息ついている場合ではない
【コメント】
・最初はうまく行かない。ある程度回数をこなして、参加者の信頼を少しずつ得ていくと、少しずつうまく行く。人の思考や行動を変えるには時間がかかる(結果的に変わらないことも起こりうるが、それは最後にわかる結果論である)。
・最近多職種カンファレンスへ参加してフィードバックする機会に恵まれている。何か気づく事があれば適宜追加予定。
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