集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

未だに苦戦しているスチュワート法の理解

2023年5月14日  2024年4月6日 

  【ざっくりスチュワート法】

血液ガスの読み方の1つ。その要諦は
 1.溶液中の陽イオンと陰イオンの数は等しい
 2.HイオンとHCO3-は、SID、PCO2、Atotによって決定されている

1.を式にすると、
  [Na+]+[K+]+[Ca2+]+[Mg2+]  =[Cl-]+[Lac-]+[Alb-]+[P-]+[HCO3-]+[SIG]
 SIGというのは不揮発の酸で、古典的なアニオンギャップである。
 正常では、 [Na+]-[Cl-]=[Alb-]+[P-]+[HCO3-]=36であり、[K+]+[Ca2+]+[Mg2+]=[SIG]である。

2.の中身をみてみると(PCO2は省略)、
 SID=[Na+]+[K+]+[Ca2+]-[Cl-]+[Lac-]
 Atot=[Alb-]+[P-]
である。
SIDとは、強イオン差、つまり水溶液中で必ず電離しているイオンのことである

1. 2の式から、
SID=[HCO3-]+Atot+SIG
これを変換して
[HCO3-]=SID-Atot-SIG
が分かる。
要諦の通り、HCO3の濃度は4つの要素(SID、Atot、SIG、PaCO2)で自動的に決まっているのである。

【臨床的応用は?】

正常との解離から確認していく。
正常では、
・[Na+]-[Cl-]=[Alb-]+[P-]+[HCO3-]=36

1.Na-Clの差を見る。(Na-Clの高い低いは、HCO3の高い低い結果を見ている)
→36より低ければアシデミア、36より高ければアルカレミア
 この時NaやClに異常値があれば、NaやClが原因であることがわかる。

2.[Na+]-[Cl-]と[Alb-]+[P-]+[HCO3-]が一致するかを見る
→一致しなければHCO3が減った原因は不揮発の酸が増えていることである
 この時、AlbやPに異常値があれば、AlbやPが原因であることがわかる。

3.HCO3からみた予測Co2が代償範囲であるかを見る


・重炭酸を静注すると、 [Na+]が増える→SIDが増える→HCO3が増える、という理屈でアルカローシスに傾く。決してHCO3そのものが補充されている訳ではない。
・また、ラシックスで利尿すると、[CL-]がより多く失われる(ラシックスを投与するとNa/Kが1つずつとClが2つ失われる。NaとClの関係だけみると、Na1個につきClが2個失われているようにみえる)→SIDが上がる→HCO2が増える→アルカローシスに傾く。
・大きなあたりが付いたら、図で具体的な臨床像を確認。



【コメント】

・スチュワート法を使うと、鑑別が増えるがアクションが変わらない、教育には役立つ。というのが個人的理解。しかし、希釈性アシドーシスや濃縮性アルカローシスという手札が増えるのは面白いと思う。

・古典的な方法を使用している人は、Na、Alb、P、Clが大幅な異常値でないか?に注意しておくとよい。古典的読み方では正常であっても、スチュワート法では異常が検出できるパターンが存在する。

・個人的にも使用していないため、ありがたみは分からない。当然、理解も乏しい。詳しい後輩に話しを聞く時は楽しいのだが、しばらくするとまた忘れてしまっている。なお、海外の某成書の著者はやんわりとStewert推しだった。とりあえず、後輩に頼ろう。文字にするとマジでいみがわかんないよね。

【参考文献】

Rastegar A. Clinical utility of Stewart's method in diagnosis and management of acid-base disorders [published correction appears in Clin J Am Soc Nephrol. 2010 Aug;5(8):1537]. Clin J Am Soc Nephrol. 2009;4(7):1267-1274. 

Vaughan-Jones RD, Boron WF. Integration of acid-base and electrolyte disorders. N Engl J Med. 2015 Jan 22;372(4):389.

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