集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

COPDと喘息、それぞれの鑑別診断

2023年5月21日  2023年5月21日 
よくある光景が、
・独居高齢者(あるいは挿管されている)などの理由で詳細な病歴がほぼ分からない
・他院で経緯不明の気管支拡張薬が処方されている
・喘息やCOPDの急性増悪が、心不全急性増悪と紛らわしい
というケースである。
鑑別をつけるのが難しい。

 【COPD急性増悪の鑑別】

・COPD急性増悪で入院した患者の1年後死亡率は25%、5年死亡率は65%であり、死因は呼吸器系まはた心疾患系の合併症である。診断は、暴露などの病歴+スパイロメトリーで不完全な可逆性の閉塞性障害、つまり気管支拡張薬使用後もFEV1/FVC<70%が残存があることで診断する。
・COPD患者の急性増悪で、対立鑑別は、心不全、虚血性心疾患、不整脈、間質性肺疾患(ILD)、肺塞栓症、気管支拡張症、喘息、気胸である。


・心不全との鑑別で最も有用なマーカーはBNP。<100pg/mlならば心不全を否定。
・COPD患者のPE有病率は4〜6%。Geneve scoreかWells scoreでLow-Intermediate Riskならば、D-dimerをチェック、<500ng/mlならば否定。それ以上またはHigh riskならばCTAを撮影。
・肺炎との鑑別でCTは多くの場合不要で、レントゲンでOK。CRPやプロカルシトニンの役割およびカットオフに明確なものはない。喀痰の喀出量は、細菌感染を示唆し、抗生物質による治療の効果を予測する臨床バイオマーカーである。インフルエンザやCOVIDなどのウイルス性肺炎の可能性があり、これらの検査は考慮する。
・気管支拡張症は放射線学的診断、COPDは生理学的診断。気管支拡張症はCT検査で判明するが、拡張した気管支という切り口で鑑別が発生する。COPDはROSE(Radiology:放射線検査、Obstrucion:気流閉塞、Symptoms:症状、Exposure:暴露)で鑑別するが、多々重複しており厳密な鑑別は難しい。
・喘息との鑑別は詳細な過去の病歴や家族歴を聴取。
・間質性肺炎は喫煙曝露者の8%で発生。鑑別は放射線検査。

【喘息発作の鑑別】

・喘息の診断は、病歴+スパイロメトリーで閉塞性障害かつ可逆性があることの証明で行う。可逆性の試験は様々だが、閉塞障害はFEV1/FVC<70%が用いられる。可逆性には例えば、気管支拡張薬投与後にFEV1が12%または200mL以上増加する、などがある。
・喘息発作の鑑別は、多数ある。コントローラーが技術的に吸えていないコンプライアンス低下を最初に考えた後、ついで胸郭外と胸郭内に分ける。



・声帯機能不全の急性期は、喘ぎ呼吸(panting)を指導する。輪状披裂筋を活性化+真声帯の外転を引き起こし、喘鳴を回避できる。


【人工呼吸器上の鑑別】

・基線に戻っていない、というのが気道閉塞を示唆する1つのポイント。例えば、上図BがCOPD患者のAC-VC(矩形波)で吸気ポーズした波形である。下のフロー波形が基線に戻っていない状態で吸気がスタートしている。これは、過膨張と内因性PEEP(PEEPi)が示唆される。
・基線に戻っていない場合には、呼気時間を長くする(フローを早くしたり吸気時間を短くすることでサイクルを短くするか、呼吸回数をへらす)、1回換気量を最低限(6-8ml/Kg)、気管支拡張薬を使用する

【コメント】

・発作性疾患は、1.急性発作としての対応(レリーバー)、2.急性発作の原因精査と鑑別、3.発作予防の導入(コントローラー)、が重要である。このフレームワークが重要でこれだけ覚えておけば、あとは鑑別はチェックリストを見れば良い。 
 

【参考文献】

Celli BR, Fabbri LM, Aaron SD, et al. Differential Diagnosis of Suspected Chronic Obstructive Pulmonary Disease Exacerbations in the Acute Care Setting: Best Practice. Am J Respir Crit Care Med. 2023;207(9):1134-1144. 

Gherasim A, Dao A, Bernstein JA. Confounders of severe asthma: diagnoses to consider when asthma symptoms persist despite optimal therapy. World Allergy Organ J. 2018;11(1):29. Published 2018 Nov 14. 

Demoule A, Brochard L, Dres M, et al. How to ventilate obstructive and asthmatic patients. Intensive Care Med. 2020;46(12):2436-2449. 
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