集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

ICUでの抗生剤適正使用

2023年7月23日  2023年7月23日 

 

【ICUでの抗菌薬適正使用】

抗生剤はなぜ適正に使用されるべきか?
答えは、抗菌薬耐性の誘発と選択を最小限に抑えて”抗菌薬の有効性を維持すること”である。

死亡率を減らさず、抗生剤使用量を抑えるためにICUで覚えておくことは3つ

1.敗血症性ショック患者を除いてすぐ抗生物質を処方することを控える(Watchiful waiting戦略)
→敗血症性ショックになっていなければ、即座の抗生剤投与(過去の研究では90分遅れる)しても予後は変えなかった。得た時間で、診察や画像検査を通じて本当に感染かアセスメントする、培養検体を採取する、多剤耐性菌が関与しているか背景を確認する。


2. カルバペネム系抗菌薬や新規β-ラクタム系抗菌薬の使用制限
→カルバペネムの使用期間が3日未満であっても、カルバペネム耐性菌が直腸に定着する可能性は高くなる。多剤耐性リスクが低ければ出番は少ない。例えば人工呼吸器関連肺炎であれば第3世代セファロスポリンでカバーされる。




3.抗菌薬治療期間の短縮
→過去の研究から、多くの感染治療期間は7日である。


【コメント】

・ICUというのは”患者に後が無い”という点で抗生剤使用開始の閾値が低い場所である。だからこそ抗生剤の使用方法を自覚しておく必要がある。上記3つを基本に、地域や施設毎にカスタマイズした適正使用戦略を考える。

・最近、優秀な感染症内科医を失ってしまい、自分で勉強せざるを得なくなってしまった。ブドウ球菌菌血症に感染症内科が介入すると予後が良くなる(PMID:32049296)という報告はあるが、次は、感染症内科が院内から居なくなると予後が悪くなるというエビデンスが出るでしょう。
 

【参考文献】

Mokrani D, Chommeloux J, Pineton de Chambrun M, Hékimian G, Luyt CE. Antibiotic stewardship in the ICU: time to shift into overdrive. Ann Intensive Care. 2023;13(1):39. 

Paiva JA, Mergulhão P, Salluh JIF. What every intensivist must know about antimicrobial stewardship: its pitfalls and its challenges. O que todo intensivista precisa saber sobre gestão de antimibrobianos: suas armadilhas e desafios. Rev Bras Ter Intensiva.

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