2023年10月8日
2023年10月8日
A.しない。
体位によって、腸管ガスの通過速度が異なることが知られている。健常人では、立位の方が仰臥位よりも腸管ガスの通過速度が早いという実験がある(Gut. 2003 Jul; 52(7): 971–974.)。腹臥位については、これまた健常人の実験で、聴診器で採音した腸蠕動音が(腹臥位で減った結果として)腹臥位30分→仰臥位に戻った時に増加したという報告はある(Health and Behavior Sciences 9(2), 2011, 117-126)。
コメント:いずれも健常人であり、患者に外挿できない。自分ならICUにおいて腸管を動かす目的ではやらない。創部があるというリスクも無視できない。
A.なる。かなり稀。
長期の人工呼吸器装着が、患者に抑うつ症状をきたし、抑うつ症状があると人工呼吸器離脱が進まないということは過去に報告されている(Intensive Care Med (2010) 36:828–835)。ケースレポートレベルではあるが、特に精神的既往歴がない(だけで、病歴上は何か診断がつきそうなエピーソードである)28歳女性が、交通外傷後に人工呼吸器ウィーニング困難となったケースが報告されている(Crit Care & Shock (2015) 18:31-33)。Tピースにすると、過呼吸となり胸腹部が震えて離脱失敗と判断された。最終的には、抗うつ薬の処方にて穏やかになり離脱できたようである。
コメント:おそらく非常に稀であろう。個人的には見たことはない。精神的な依存を回避するために、多少無理しても抜管ということになはならないことのほうが多いのでは。患者の精神をケアすべし、という点では示唆に富んでいる。
A.不明。
アスピリンをCABG後6時間以内に内服させるのは、SVG閉塞等のイベント回避目的にガイドラインでも推奨されている(Class1A)。では2剤目も同時に6時間以内に内服させるべきかについては不明である。DAPTがSAPTよりも1年グラフと開存率が高いことを示したDACAB試験では、DAPT群もCABG後24時間以内、とされている。DACAB試験が行われた中国の後ろ向き研究では、アスピリンCABG後24時間以内(理想的には6時間以内)、2剤目は臨床的に安定していればCABG後48時間以内の投与が日常的に推奨されている様(J Am Heart Assoc. 2021;10:e020413.)。
コメント:今のところ禁忌でもなさそうだが、術者の裁量次第といったところ。余談ながら、メタ解析ではSAPTよりもDAPTでグラフト開存は増えたが、出血イベントも増えてしまっている()。今後の結果を待ちたい。
A.不明。
心筋梗塞後の左室内血栓リスクとしては、梗塞サイズが大きい(特に前壁拘束)・心尖部のAkinesis/Dyskinesis・左室動脈瘤・EF≦40%などが知られている(Heart 2012;98:1743–1749. )。
Impellaとは異なるが、同じような定常流デバイスのLVADでは脈圧に関するいくつかの報告がある。1つ目は脈圧>15mmHgで、収縮期時間の64%で大動脈弁が開いており、合併症がすくないことが示唆されている(J Heart Lung Transplant . 2009 May;28(5):423-7.)。2つ目はLVADのマネジメントに関するレビューで、”LV圧とポンプ速度の適切なバランスが望ましい。これは通常、脈圧が10~20mmHgで、大動脈弁が約3拍に1回開くことで達成される”とされている(J Heart Lung Transplant 2010;29:S1–S39)。
コメント:LVADという定常流デバイスでは、脈圧が15〜20mmHg以上ないと、様々な合併症の存在が仮説として提示されている(例:シアストレス増加→後天性フォンウィルブランド病→消化管出血)。ここから外挿するに、Impella中も脈圧が出ているに越したことはなさそうである。しかし、これらは結果論であって、心筋梗塞の結果として脈圧が出せない患者にDOBで叩いてまで得るほうがいいのだろうか?心筋酸素需要を減らしたいフェーズではDOBを使いたくないというのが心象であり、自分はわざわざしないプラクティスである。ヘパリンを使ってモニターしよう。
・理想的には、自分は何でも集中治療のこと知っている!という発言が自分もできるようにいつかはなりたいのだが、現実は数年やってもまだ入り口に立ったくらいしか思えない。
・指示されたことの裏を取っていくと論文が出ていたりして面白い。意外に根拠あったりするんだな、ということでまだまだ知らないことばかり。結局、このような根拠を地道に集めて、次の似たような場面において仮説生成→診療→根拠の検証を繰り返していくことしか、自己の成長はない。
・この手の話には、まだ研究検証の余地が残っていそうである点も興味深い。
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