集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

急性右心不全マネジメント忘備録

2023年10月15日  2023年10月15日 

  【マネジメントの一般論】

右心不全の原因は3つである。
①容量負荷(例:弁膜症、静脈還流量増加、intraventricular-dependence)
②圧負荷(例:右心不全の非代償、肺塞栓、肺高血圧症)
③心筋障害(例:心筋梗塞や心筋炎、サルコイドーシス、右室心筋症)
よって、マネジメントはこの3つのいずれかをターゲットとしている(補足:正確には要因が複合しているので、必ずしも1:1対応ではないがここは割り切って考える)。

①容量(前負荷)
・輸液管理:前負荷減少に耐えられないが、全体はVolume overであることが多い。輸液負荷も利尿も慎重にモニター下に行う。CVPは14mmHgを下回るのを1つの目標にしつつ(ガイドライン的には8〜12mmHgとも)+心拍出量が保たれているかどうかを確認しながら、ループ利尿薬を積極的に投与。カリウム高値がなければアルドステロン拮抗薬を、HCO3が30mEqを超えるようであればアセタゾラミドを併用。
利尿薬に反応なければ限外ろ過などの透析で除水を行う。血圧が低くて利尿や透析での除水が行えなければ、ノルアドレナリンまたは機械的サポートを併用。

②圧(後負荷。関与因子は肺血管抵抗、コンプライアンス、肺インピーダンス)
・酸素投与:強力な肺血管拡張薬。右心の後負荷を下げる。SpO2の目標は92%以上。
・アシデミアの回避:アシドーシスは肺血管抵抗を上昇させる。原因とpH次第でメイロンを使うこともある。
・陽圧換気の回避:1回換気量を6ml/Kgと初期設定し(機能的残気量に近い肺活量)PaCO2を35-40mmHgを目指す、PEEPを最小設定にする。
・肺血管抵抗を下げる薬剤の使用:エポプロステノールやPDE5阻害薬、カルシウム拮抗薬、NO吸入(保険適応に注意)、ニトログリセリンやニトロプルシドなど。血圧に余裕があれば、ニトログリセリンが最も半減期的には取り扱いやすい。

③心筋
・強心薬:CI≧2.2が最初の目標。ミルリノンかドブタミン。ミルリノンは体血圧低下や腎機能患者での効果遷延がおこりうる。ドブタミンは頻脈誘発で拡張末期圧上昇や冠動脈血流低下により逆に心拍出量低下を起こしうる他、かなり稀だが好酸球性心筋炎を引き起こしてさらなる心機能低下を起こすことがある様。これらは短期的な血行動態改善が期待できるが、長期的には酸素需要を増加させ、死亡率上昇と関連。
・昇圧薬:MAP≧65mmHgを1つの目標。ノルアドレナリンが第一選択。小規模な研究では、肺血管抵抗は増加するものの、末梢血管抵抗増加→右冠動脈流増加→右室心筋の酸素供給量の改善により右室駆出率には変化がみられなかった。第二選択はバソプレシン。低用量(0.01-0.03U/分)使用時には、血管平滑筋細胞のV1受容体に結合→内皮一酸化窒素の刺激→肺血管拡張。小規模ケースコントロール研究で、肺血管抵抗を下げつつ平均体血圧を上昇させるという報告ある。
・虚血の解除
・VA-ECMO(ただし可逆性のある場合の一時的ブリッジとして)

【治療の反応をどのように確認するか?】

明確な答えはなく、モニターしながら…とした言いようが無く個別化する。
右心のアウトプットが増える≒左心のアウトプットが増える、と考えてアクションした結果左心のアウトプットが増えたのか?という点は確認する。
そのため、血行動態パラメーター+うっ血所見+自覚症状の3つを組み合わせる。
(体感的にはこの順に改善してくる気がする)
やはり、診断と血行動態モニターを兼ねて肺動脈カテーテルがほしいところ。

肺動脈カテーテルがなければ…
血行動態パラメーター:エコー(TAPSE、TRPG、IVC径、LVOT-VTI)+CVP
うっ所見:身体所見(下腿浮腫、尿量、頸静脈怒張)+採血(ビリルビンやLFT、Creなどのトレンド)
臨床症状:全身倦怠感や意識変容、せん妄などの臨床症状

肺動脈カテーテルでモニターするならば…
血行動態パラメーターに、①RV/PAWP、②PAPiを加える

【右心不全に対するIABP?】

IABPは間接的な右心サポートになる。理由は、
①拡張期にバルーンが膨張→MAP上昇→冠動脈血流増加
②収縮期にバルーンが収縮→左室後負荷減少→LVEDP減少→  RV後負荷減少

臨床的には報告は様々ながら、レビューでは右心不全の改善目的にIABP使用は推奨されず。

有用だったという報告(Ann Thorac Surg 2000;70:1587–93)
心臓移植後の右心不全を対象とした後ろ向き報告。n=5、CVPは有意に低下したが[21.6→13.8]。PAWPは有意差なく低下[14.8→12.4]。4名が1年後に心機能良好に生存。

有用でなかったという報告(Eur Heart J Acute Cardiovasc Care . 2017 Dec;6(8):709-718):
両心不全の心原性ショックに対する後ろ向き報告。n=47、肺動脈カテーテルを挿入した15名の72時間後のパラメーター変化は、RAPは有意差なく低下[21→16]。PAWPは有意差なく低下[24→23]。左心不全単独と比較して、30日死亡は変わらないが(18% vs 18%, p=0.98)、72時間以内の予期せぬ機械的心サポートのアップグレードが有意に増加(21% vs 2%, p<0.001)。

【腹臥位が右心系に与える影響】

複数の理由で、腹臥位は右心の後負荷を下げる。
 1.無気肺の改善→血管が拡張することで肺血管抵抗が低下
 2.腹臥位による酸素化改善→必要PEEPが下げられる
 3.プラトー圧や駆動圧を低下させる

当然ながら、敗血症合併で血行動態が悪い場合などでは無効であり、血行動態安定目的に行ってはならない。

【コメント】

・右心不全は治療の方法手段が乏しく、治療モニタリングも個別化して試行錯誤が必要なので、ICUで肺動脈カテーテルを入れて張り付いているイメージがある。

・右心不全だからIABPを入れよう、という議論になったことも実行したこともない。入っていると循環モニターの影響があることは知っておいても良さそう。

【参考文献】

Konstam MA, Kiernan MS, Bernstein D, et al. Evaluation and Management of Right-Sided Heart Failure: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2018;137(20):e578-e622. 

Kaestner M, Schranz D, Warnecke G, Apitz C, Hansmann G, Miera O. Pulmonary hypertension in the intensive care unit. Expert consensus statement on the diagnosis and treatment of paediatric pulmonary hypertension. The European Paediatric Pulmonary Vascular Disease Network, endorsed by ISHLT and DGPK. Heart. 2016;102 Suppl 2:ii57-ii66. 

Houston BA, Brittain EL, Tedford RJ. Right Ventricular Failure. N Engl J Med. 2023;388(12):1111-1125. 

Kapur NK, Esposito ML, Bader Y, et al. Mechanical Circulatory Support Devices for Acute Right Ventricular Failure. Circulation. 2017;136(3):314-326. 

Ventetuolo CE, Klinger JR. Management of acute right ventricular failure in the intensive care unit. Ann Am Thorac Soc. 2014;11(5):811-822. 

Vieillard-Baron A, Boissier F, Pesenti A. Hemodynamic impact of prone position. Let's protect the lung and its circulation to improve prognosis [published online ahead of print, 2023 Feb 23]. Intensive Care Med. 2023;10.1007/s00134-023-07001-2. 


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