2023年10月29日
2023年10月29日
……奥ゆかしさだ。奥ゆかしさを知れ。
これで終わりじゃない。ここから始めるんだ。
お前自身が。
ーカギ・タナカ
(ニンジャスレイヤー スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ)
Gunderman R, Hua CN. Education in cultural competency in Japan. Acad Radiol. 2014;21(5):691-693.
・総じて興味深く、読んでいておおブッダ!となったペーパー。奥ゆかしき日本人に対する、医学教育に際しての、注意点が古事記めいて書かれている。自分の奥ゆかしさ、つまり自分自身を知るというのは、人生において最強のコスパを誇るライフハックである(なろう系の主人公が最強なのは、自己の能力とその使い方をよく把握しているからである)。とはいえ、自分のことになると全くの盲目になりがち。一般的には?→個別化して自分は?というとこは一つの手がかりになる。
・”日本人の死に対するとらえ方は、西洋人とは異なっており、科学的でないことが多い。たとえば、脳死という概念は日本ではまだ受け入れられていない。”
→科学的かどうか、だけでなくシステムや医療者側の問題などもある。言うて、西洋人はみんな科学的なのか?例えば、ヨーロッパと一言いっても、北欧と南欧では全く考え方が異なる。
・”どのような治療方針が最も適切かについて、医師はしばしば家族に委ねる”
→残念ながら、尋ねるのはProcedure(挿管とかCVとか)であって、Goalではないこともしばしば。。。これは歴史と教育構造、法的な問題だと思っている。家族がProcedureのことがよくわからない(当然である)→おまかせしますor家族がとりあえず決める→家族が言ったから…と進行して、患者自身は取り残される。
・”アメリカ人はコミュニケーションの言語的側面に大きく依存する傾向があり、すべてを明確に述べようとするのに対し、日本人は文脈、共有された経験、意味を伝えるための非言語的手がかりに依存する”
→アメリカ人が皆、明確に述べようとするわけではなく、わかりにくい京言葉的な婉曲表現もよく使う。
・”日本では、がんなどの病気であることを患者に伝えないことの方がはるかに一般的であり、いくつかの調査では、そのような診断を患者に伝えると答えた医師は3分の1以下であった。このような診断の告知はストレスを引き起こし、精神医学的問題、あるいは自殺を誘発すると考えられている”。
→免疫チェックポイント阻害薬等の発達や、これまでの医療・倫理に対するより戻しもあり、今や告知しないことのほうが極めて珍しいと思う。一般論的にはBad news tellingが有害であると判断された限られた場面、例えば、認知症が酷い患者において、家族が「もともとの本人の性格から、本人が(告知も含めて)つらくないほうがいいと思うので…」ということで、緩和の一環として告知しないことは、ある。
・”日本の文化は一般的に米国よりも男性優位であるにもかかわらず、米国の女性が男性よりも優位に立てる点もある。例えば、日本のコミュニケーションは米国に比べて言葉によるものが少ないことが多いため、非言語的で感情的なコミュニケーションに依存する米国人女性の方が、日本文化に自然に適応できる可能性がある”
→単に英語が苦手なだけでは…
・”ビジネスを行う際、日本人は人間関係を重視する傾向がある。アメリカ人は取引を公正さ、価格、品質で評価することが多い。日本では、ビジネスを対人関係の構築の手段としてとらえることが重要である。贈答は重要な役割を果たし、利益相反とはみなされない。レストランやバーに行くことは奨励され、一緒に飲むことは絆を深める重要な体験となる。アメリカ人にとっては酩酊に見えることでも、日本人にとっては生涯の絆を築くのに役立つかもしれない。そのような場では、アメリカ人は大声で話しても嫌われないこと、食べ物をすするのは食事を楽しんでいることを示す一つの方法であることに注意すべきである”。
→日本人は理解ではなく納得を得るためにも、何事も義理。残念ながら、出羽守は嫌われがちである(何を言った、よりも誰が言った、で評価される)。バンザイチャント重点。
・”意思決定の手段としての対立は嫌われ、どんな犠牲を払っても避けられる。その代わり、日本人は合意形成によって意思決定を下すのを好む。チームが第一である。”
→ICUでの対立において割を食うのは患者であるため、チーム第一であることは多くのケースでは実際良い。問題は、有害であろうと思うことを主科がやろうとする時。ICUサイドは強く反発しても、合意形成に至らないこともある。(カルテには合意に至らなかったしっかり事実をドキュメントするが、そのドキュメントが自分を守ってくれるかはわからない)
そういうときにの心構え2つ。
1.そもそもICU医師が居なければ、患者に有害なことは施されてしまうのである
2.アセスメントと提案力は放棄していけない。いずれかを放棄するというのは、職務を放棄しているのと同義である
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