2024年1月21日
2024年1月21日
活性化プロテインCという薬剤を知っているだろうか?
その昔、とある米国大企業が関与した薬剤で、敗血症性ショックに使用されていた薬剤”らしい”。
→「活性型プロテイン C 製剤の失敗から学ぶべきこと」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/19/4/19_586/_pdf/-char/ja
残念ながら医師免許取得前に、市場から駆逐された薬剤であり、使ったことはない。
現在、クモ膜下出血に対して、クラゾセンタンという薬剤が出現しており、
内心、活性化プロテインCに似た状況ではないか?と思って興奮が冷めやらない。
概要:
SAH患者(N=413)を対象にした多施設無作為DBRCT。
プラセボまたはクラゾセンタン(1mg/h, 5mg/h, 15mg/hの3群)を割り付け56時間以内に投与を開始し、14日間まで継続。
主要エンドポイントは、くも膜下出血後7~11日に実施した血管造影の読影盲検評価による中等度または重度の血管攣縮。
試験備考:
SAHはCTで長軸20mm以上かつ短軸4mmのびまん性または限局性のSAH、WFNS grade1-4または5だったが4に改善した(脳室ドレナージをして改善したものも含む)症例。
主な除外をピックアップすると、嚢状動脈瘤破裂以外の病変による SAH、入院時 DSA で脳血管攣縮、輸液療法に抵抗性の低血圧(収縮期血圧 90mmHg)、神経原性肺水腫または強心薬を必要とする心不全、治験責任医師の判断、腎臓(血漿クレアチニン2mg/dL以上)、肝臓疾患(総ビリルビン3mg/dL)。
両群に共通する治療は、ニモジピン経口内服と1日3Lの輸液負荷で、予防的なニカルジピン投与等は禁止された。
スポンサーが資金提供した。
結果:
血管攣縮はクラゾセンタン群で減少(66% vs 39%、95%CI 29-50%, p=0.003)。
クラゾセンタン群は肺合併症(27% vs 44%)と低血圧(3% vs 12%)、貧血(17% vs 29%)、死亡率(4% vs 8%)の発生率が増加。
(注:結果は全てクラゾセンタン5mg/h投与量群との比較を記載している、日本での通常投与量は10mg/hr)。
概要:
SAHでクリッピング手術を受けた患者(N=1157)を対象にした多施設無作為DBRCT。
プラセボまたはクラゾセンタン(5mg/h)を1:2に割り付け。56時間以内に投与を開始し、14日間まで継続。
主要エンドポイントは、6週以内の複合エンドポイントで、全死因死亡、血管攣縮に関連した新たな脳梗塞、血管攣縮による遅発性虚血性神経学的欠損(修正GCSが2点以上減少またはNIHSS2点以上増加が2時間持続)、血管攣縮に対する救援療法。
試験備考:
SAHは入院時CTスキャンでびまん性血栓(長軸20mm以上、または両半球に存在)を認め、術前にWFNSグレード1〜4。
主な除外は非動脈瘤性SAH、SAHのない脳室内または脳内出血、入院時の血管造影による血管攣縮、クリッピング術中の重大な合併症発生。
治療はガイドライン通りで、標準治療以外の薬剤使用は禁止。経口ニモジピンはOKだが静注は不可。
血管攣縮の評価は中央一括で神経放射線科医2名が読影。
サンプルサイズ計算を試験中に修正した(主要エンドポイントの相対減少を当初40%と想定していたが、後に30%へ減らした)。
スポンサーが資金提供、試験デザイン、データ収集と解析、間接的に論文執筆支援に関与。
結果:
主要エンドポイントは有意差なし(クラゾセンタン群21% vs プラセボ群 25%、相対リスク減少17%、95%CI -4〜33%、p=0.1)。
クラゾセンタン群は肺合併症(18% vs 34%)と低血圧(4% vs 12%)、貧血(15% vs 22%)の発生率が増加。死亡率は変わらず(5% vs 5%)。
概要:
SAHでコイリング手術を受けた患者(N=571)を対象にした多施設無作為DBRCT。
プラセボまたはクラゾセンタン(5mg/hまたは15mg/h)を1:1:1に割り付け。56時間以内に投与を開始し、14日間まで継続。
主要エンドポイントは、6週以内の複合エンドポイントで、全死因死亡、血管攣縮に関連した新たな脳梗塞、血管攣縮による遅発性虚血性神経学的欠損(修正GCSが2点以上減少またはNIHSS2点以上増加が2時間持続)、血管攣縮に対する救援療法。
試験備考:
SAHは入院時CTスキャンで血腫量が厚く(短軸4mm)、術前にWFNSグレード1〜4。
主な除外は動脈瘤サイズが25mm以上、SAHのない脳室内または脳内出血、入院時の血管造影による血管攣縮、コイリング術中の重大な合併症発生、過去にクリッピング術を受けた動脈瘤の破裂など。
治療はガイドライン通りで、標準治療以外の薬剤使用は禁止。経口ニモジピンはOKだが静注は不可。クラゾセンタン投与24時間以内のファスジル投与開始および4時間以内のニモジピンとニカルジピン静注は禁止。
血管攣縮の評価は中央一括で神経放射線科医2名が読影。
スポンサーが資金提供した。
CONSCIOUS2試験の結果判明後に、本試験は早期中止された。
結果:
主要エンドポイントは5mg/hでは有意差なし(クラゾセンタン群27% vs プラセボ群 24%、OR0.786、95%CI 0.479-1.289、p=0.34)、15mg/hで有意差あり(クラゾセンタン群15% vs プラセボ群 24%、OR0.474、95%CI 0.275-0.818、p=0.007)。
クラゾセンタン群(15mg/h)は肺合併症(21% vs 37%)と低血圧(7% vs 16%)、貧血(10% vs 13%)の発生率が増加。
死亡率(5% vs 6%)と機能予後不良(24% vs 28%)は変わらず。
・自分よりも遥かに賢いハーバードのお医者さんたちが査読して、NEJMに活性化プロテインCの研究を掲載したというのは、歴史的にみて凄いことではなかろうか。おかげで、イーライリリーは多大なる売上を得た。使用された患者がどうなったかは知る由もない。
・歴史は繰り返すというが、活性化プロテインCの時の興奮を味わっているという点では、貴重な経験。現代においてクモ膜下出血に対して、全例クラゾセンタンが使用されている現状をみているので、将来得うる興奮のために今勉強しておく。この一連の研究は、NASCIS研究(脊髄損傷に対するステロイド)感あってスゴ味を感じた。
CONSCIOUS1:合併症は増えたけど、投与量の当たりはついたっしょ
CONSCIOUS2:WFNS Grade1-2のクリッピング術では意味なかったか…
CONSCIOUS3:試験が途中で中止されたお…WFNS Grade1-2のコイリング術も駄目だったか…
・どういう経緯か、この世において日本はこの薬剤を認可し、2022年は薬価ベースで75億円を売り上げた。国が認めているので、法的には不適切ではない。
・活性化プロテインC禍を経験した(であろう)大御所の意見。噂話によるとクラゾセンタンについて某学会内部では何かアクションしたほうがいいと思う人もいるようだが、まあ色々あるようだ。
Macdonald RL, Kassell NF, Mayer S, et al. Clazosentan to overcome neurological ischemia and infarction occurring after subarachnoid hemorrhage (CONSCIOUS-1): randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2 dose-finding trial. Stroke. 2008;39(11):3015-3021.
Macdonald RL, Higashida RT, Keller E, et al. Clazosentan, an endothelin receptor antagonist, in patients with aneurysmal subarachnoid haemorrhage undergoing surgical clipping: a randomised, double-blind, placebo-controlled phase 3 trial (CONSCIOUS-2). Lancet Neurol. 2011;10(7):618-625.
Macdonald RL, Higashida RT, Keller E, et al. Randomized trial of clazosentan in patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage undergoing endovascular coiling [published correction appears in Stroke. 2012 Jul;43(7):e68]. Stroke. 2012;43(6):1463-1469.
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