集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

Chest SEEKがくそ難しい①

2024年9月22日  2024年9月22日 

 

【メモ:間違えたところだけ勉強用】

4.Pelger-Huet異常症が重症COVID19感染後によく見られる
好中球の低分化。正常では平均3.5個に分葉しているが、分葉せぬまま血中にでてくる。好中球の質的異常を示す。これだけでは病的意義をなさない。
ペルガー・ユエの異常

10.臓器移植後に高アンモニア血症を起こす
特に肺移植後に多く、発生率1〜4%。典型的には術後2週間〜30日以内に原因不明の神経障害を発症する。原因は、術後の肝機能障害や高ストレス下における尿素サイクル障害。
鑑別として、ウレアーゼ産生菌による日和見感染症があり、”Mycoplasma homnis, Ureaplasma urealyticum, Ureaplasma parvum”などの感染症をカバーしなければならない。よって、臨床的には高アンモニア血症では血液培養やPCRの結果を待ちつつ、ドキシサイクリンとレボフロキサシンをEmpiricalに投与しておく(ドキシサイクリン+キノロンまたはマクロライドのダブルカバレッジが普通の様)。なお、この高アンモニア血症に対してリファキシミンやラクツロースは無効で、窒素捕捉剤である安息香酸塩などの投与が行われる。

16.ボリコナゾールとタクロリムスは相互作用を起こす:
ボリコナゾールがCYP3A4を阻害することで、タクロリムスの血中濃度が起こる。その臨床像はボリコナゾール投与1〜3日後に発生する神経毒性(典型的には両側上肢の振戦)、電解質異常、QTc間隔の延長、緊張亢進である。ボリコナゾールはTDM薬剤で、目標血中濃度は2.0~5.5IAg/mLが推奨されている。

26.血管炎を疑う重症患者はメチルプレドニゾロン+シクロフォスファミド
血管炎の確定診断は、組織診である。
理想的には腎生検で検体を得るが、組織診が出るまでに重症患者では見切りで治療を開始せねばならない。この臨床像の見極めが難しい。ICUで特にマズイのが肺胞出血だが、病歴上血痰が出現しない症例が1/3あるため画像から疑えば気管支肺胞洗浄を積極的に行う。治療においてはステロイド単剤は有効性が証明されていない。シクロフォスファミドの代わりにリツキシマブは検討される。
なお、設問にでてくるMMP3とは、マトリックスメタロプロテアーゼのことである。3つのカテゴリーがあるので、MMP1-3まである。TNFなどのサイトカインがMMPを活性化→関節破壊が起こる。

43.APRVモードでは患者の自発呼吸はどのタイミングでも起こる
APRVモードとはサイクルの80〜90%が吸気で、0.4〜0.8秒という大気圧と近似しない程度の短い間にPEEP0〜5の吸気時間が特徴的なモードである。平均気道圧を高めた状態を長時間維持することで、コンプライアンスが異なる肺胞の換気とガス分配を均一化する時間を長くし、肺胞のリクルートメントをすることができる。Phigh時間を長く保つことで、呼気終末肺容積が増加してストレイン(呼気週末肺容積と吸気週末肺容積の比)が低下する。高く長い胸腔内陽圧がかかるため肺切除後や気胸、気管支肺瘻や肺高血圧では禁忌となる。

APRV 101: PEEP to the Max – CriticalCareNow

初期設定は、Phighはプラトー圧に近似するため30cmH2Oに、Plowは0cmH2Oとする。Thighを5秒に、Tlowは0.5秒にするが、Tlowは肺の部位によってはOccult atelec traumaが起こり得るため0.2秒以下が良いという意見もあるよう。フローモニターから、T-lowがピーク呼気流量の約75%で呼気流量を終了していることを確認できるようにTlowを調整する。
離脱例としては、FiO2を0.4まで減らし、ついでPhighを2ずつ下げ、12〜15cmH2Oに達したら、PSVモードのPEEP12~15cmH2O、PS10cmH2Oにいきなり切り替える。

75.SJS/TENの初期症状はびまん性の皮膚疼痛や羞明・結膜乾燥・咽頭痛などの粘膜症状となることがある
高用量のベンゾジアゼピンを使用してもコントロール不能なアルコール離脱には、2nd lineとしてバルビツールの使用が検討される。フェノバルビタールには強い呼吸循環抑制がある他、稀にSJS/TENなどの皮膚粘膜障害を起こす。
重要なことは2点。タイムコースを知っておくことと、被疑薬を躊躇なく中止すること。
タイムコースについては、投薬開始の平均5-28日後にSJS/TEN発症、前駆/初期症状が目に見える皮膚粘膜出現の1-3日前に見られる。
高リスク被疑薬で知っておくべきは、アロプリノール、抗てんかん薬(ラモトリギン、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール)、抗生剤(特にスルファメトキサゾール)、オキシカム系NSAIDS(メロキシカム、ピロキシカム)、抗HIV約(ネビラピン)

81.ブラストミセス症の治療は、改善するまでアムホテリシンBの静注を行い、その後経口イトラコナゾールに切り替える
日本では馴染みがないが、危険な輸入真菌症の1つ。なお最も危険な輸入真菌症はコクシジオイデスであり、”本菌は地球上のあらゆる真菌の中でもっとも病原性が強く、 健常人でも感染し死に至ることもある”とされている(参照:https://idsc.niid.go.jp/iasr/23/265/tpc265-j.html)。
コクシジオイデスの感染は、ミシシッピ流域やシカゴ周辺でコクシジオイデスの胞子を吸引することから始まる。50%は無症候性だが、残りの50%は潜伏期3〜6週間を経て、90%は肺炎症状を起こす。肺外病変は皮膚病変が多く、これは血行性伝播によって生じている。肺外病変をきたすと、疾患は進行性で死亡率は最大90%と報告されている(Up to date)。
稀ながら、想起しなければ日本においては診断不能であろう。想起トリガーは、流行地域への渡航歴+難治性肺炎±特徴的皮膚所見。検体から、検査技師の暴露も起こり得ることや専門施設への転院を考慮しなければならない(千葉大か国立感染症研究所)。



【コメント】

・今の上司から「教科書に書いてあるのに知らないの?適当なことばっかり言っていないでもっと勉強したほうがいいんじゃない?」と言われて、自己学習を始めた次第。移動のスキマ時間を見つけて、CHEST SEEK critical care medicineを解いたんですよ。以前に完投したATS問題集、5択ながら余裕だったから…SEEKは4択だし余裕でしょと高をくくっていたら大間違い…なんと驚きの正答率6割ジャスト。

・とりあえず、解説を読みつつ自分で調べてたことをメモ用に。APRVモードなど自分では使用したことはなく、アルコール離脱の2nd lineにバルビツレートも使用したことはない(プレセデックスかプロポフォールかな)。なかなかに勉強になる。

・MMP-3は某先生がdisってたのを思い出した。

・大人はウソをつくのではありません、間違いをするだけなのです…と言い訳したいが、私は嘘をつく生き物だったので、常に勉強したいと思います…しかしどうして6割…ナンデ?ほんと、適当なことばっかり言ってました。反省します。


【参考文献】

Swindin J, Sampson C, Howatson A. Airway pressure release ventilation. BJA Educ. 2020;20(3):80-88. 
ー記事をシェアするー
B!
タグ

コメント

人気の投稿