集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

ICUの3号液

2025年11月9日  2025年11月9日 

ICUのメインとは 

心臓外科術後、ICU帰室直後に”メイン 3号液40ml/hr”という指示がある。
おそらく、世には普遍的な指示なのか?
個人的統計によれば…

 やっているのを見た施設 2

 やっているのを見たこと無い施設  2

 やっているというのを伝聞した施設 1

 そういえば記憶がない施設  3

 そんなことよりICU帰室後にルーチンでボルベンが使われて困ってますという施設 1


ICUの3号液をめぐる研究 

PubmedでSolita T3→3件、Sorita T3→1件、Sorita-T→1件しかない。
日本から発表された、抗癌剤のハイドレーションの研究では使用されていたりするのだが、ことICUに関しては研究は見当たらなかった。

急性期維持輸液レビューまとめ:
・維持輸液の目的→電解質と細胞外液量の維持。
・以前は小児・成人を問わず低張性維持輸液を投与の主流だったが、急性期患者ではアルギニンバソプレシン(AVP)過剰状態で低ナトリウム発生リスク高い状態にある。実際に院内低ナトリウム血症の発生率が高いこと、そして低ナトリウム血症性脳症に関連する医原性死亡や永続的神経障害が複数報告されている。
・AVPが過剰産生のトリガーがあるため、AVPが過剰状態→血行力学的刺激 (肝硬変や心不全など)or 非血行力学的刺激(疼痛・悪心嘔吐・低酸素・高二酸化炭素血症など)
・AVPが過剰産生のトリガーがないが、AVPが過剰状態→SIADH(癌、神経系の傷害、感染症、呼吸器疾患、薬剤など)
・維持輸液の必要性は患者背景や病態によって変わる

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・ソリタT3のTとは東大のことであり、これは東大の小児科グループが開発したことに由来する。3号機がメイン機体なのは、エヴァンゲリオンくらいしか記憶にないが、見かける施設ではいずれも3号液に”メイン”とラベルが貼ってある。

・2015年時点でのNEJMレビューでも、データは示されないものの、”有害性にもかかわらず急性期の維持輸液として推奨され続けている”、と記載されており(著者らは維持輸液に対して反対する研究を実施するグループである)、その量は”1950年代のモデルを基に、半生食を2〜3L/day”というから、メインといったも過言ではないのかもしれない。

・自分は3号液をほぼ使わない。唯一使う場面は、DKAで一般病棟へ出て内科に引き継ぐときにつなぐかな、くらいであるが、なくても全く困らない。あと、ボルベンは一度たりともICUで処方したことないです。

 参考文献

Moritz ML, Ayus JC. Maintenance Intravenous Fluids in Acutely Ill Patients. N Engl J Med. 2015;373(14):1350-1360.

Mayerhöfer T, Shaw AD, Wiedermann CJ, Joannidis M. Fluids in the ICU: which is the right one?. Nephrol Dial Transplant. 2023;38(7):1603-1612.
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