集中治療の勉強・雑感ブログ。ICU回診でネタになったこと、ネタにすることを中心に。コメントは組織の意見ではなく、自分の壁打ち用。

気脳症でいつまでベッド上安静にする?

2025年12月7日  2025年12月7日 

気脳症のマネジメント

気脳症とは、頭蓋内に空気が貯留することを指す。症状は頭痛、嘔吐嘔気、めまい、痙攣、そして気脳が頭蓋内に入ってくるゴロゴロ音が聞こえる、などである。

一般的マネジメントとしては以下の保存療法で、2−3週間で85%が再吸収されていたという。(Surg Neurol Int. 2015 Sep 29;6:155. )
  • 患者を30°のファウラーまでとし、ベッド上安静
  • 鼻吹き、咳、くしゃみなどのバルサルバの操作を避ける
  • 鎮痛剤と解熱剤
  • 浸透圧利尿薬
  • 高流量酸素療法。ただし陽圧換気は避けてフェイスマスク5L/分で2日間投与。(Statperlsには5日間と書いてあるが、小さな比較研究高圧酸素療法の対照群の治療)
  • 高圧酸素療法
なぜ高圧酸素療法が?というと、気脳の窒素濃度を低下させて酸素に置き換えることで、血液への拡散で気脳の減少を促進させるという意図である。
ただしその効果は、消しカスクリーナーメタ解析をみてもなんとも言えない結果となっている。Neurosurg Rev . 2024 Jan 4;47(1):30.

で、いつまでベッド上安静?

A. 答えはない

調べても答えは出てこない。
一般論的に、神経集中治療界隈では24時間以後(これは脳梗塞から外挿された数字で、SCUにおける24時間以内の超早期リハビリ介入は予後を悪化させるかもしれないことが指摘されている)多職種でリスクとベネフィットを協議したうえでの早期離床が推奨されている(Intensive Care Med . 2024 Aug;50(8):1211-1227.)。

これまで出会った脳神経外科は1週間の安静がデフォルトだった。
一応、自分の中の考えは…
 緊張性→手術
 有症状→鎮痛薬など対症療法で耐えられる制限なし、1週間みて症状増悪傾向なら手術検討、それ以外は保存
 無症状→対症療法を頓用で、ベッド上安静は不要、リハビリ制限なし

なお、ルーチンで全員に下剤を処方。
流石に1週間のベッド上安静は、PICSとのバランスがどうにも悪いように思う。

コメント

・レビューのFig 1で笑ったけど、これ許されんの?

・消しカスクリーナーと書いて消したが、正式名称はGarbage In, Garbage Out。

気脳症の患者はほぼ不穏であり、ICUでの転倒で訴訟が発生することを考えると、鎮静剤を投与して安静もやむを得ない…というのもよく理解できる。1週間(もすればきっと不穏が良くなるだろうという予見可能性をもとに)ベッド上安静というのは世の中に即した現実的な期間かもしれない。

・なお、気脳症で外界と交通していなければ予防的抗生剤はしない派である。

参考文献
Dabdoub CB, Salas G, Silveira Edo N, Dabdoub CF. Review of the management of pneumocephalus. Surg Neurol Int. 2015;6:155. Published 2015 Sep 29.


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