加圧抜管/吸引抜管の効果
加圧抜管には以下のような効果があるとされる:
・下気道と上気道の圧較差を作ることで、喀痰が下気道へ垂れ込むのを間接的に予防する
・無気肺を予防することで、酸素化を維持できる
吸引抜管は、挿管の逆手順と考えるとわかりやすい:
・口腔内容物の気道への垂れ込みを直接吸引することで、予防する。
世界的には85%くらいが気管内吸引を行っているらしい。
最近のRCT@加圧抜管
加圧抜管と吸引抜管のシステマティックレビューによれば、”加圧抜管のほうが合併症リスクが低い傾向にあった”とされるものの、そもそもあまり質の高い研究がない(Respir Care 2023;68(3):429–436.)。
このレビューで比較的バイアスが少ないと評価された研究をみてみると、(Respir Care. 2022;67(1):76-86.)
P:ICUで挿管され、SBTをクリアしている18歳以上
I:PSV15/PEEP10に設定して抜管
C:閉鎖回路で吸引しながら抜管
O:72時間以内のNPPV/HFNC装着または再挿管
患者背景をみてみると、
・中央値63歳、APACHE2スコア中央値16。
・挿管理由は緊急手術20%、予定手術30%、内科疾患33%、呼吸疾患12%
・挿管は中央値4日、抜管時のPF320
結果、Primary outcomeや有害事象発生は両群有意差なし。
全体のアウトカムは加圧抜管がやや良い傾向にあるため、筆者はらは加圧抜管を推すような論調にも見えるが、やるなら加圧抜管でも吸引抜管でも、という印象。
なお、前述の通り世はほとんどが吸引抜管であるらしいため、Traditinal Extubationが吸引抜管という扱いとなっている。加圧抜管が、ただ抜管するより優れているかは不明のまま。
最近のRCT@吸引抜管
一方で、これまで吸引抜管に関して、エビデンスが乏しい背景があった。
吸引抜管に関するINNOVATE trialが発表されている。
P: 気管切開または緩和ケアを受けていない、初回挿管であるICU入室中の患者
I:FiO2 100%を抜管前に10分吸入+閉鎖回路を使用しない吸引抜管
C:FIO2 35%、吸引抜管しない
O:抜管後48時間以内の再挿管または非侵襲的換気
両群とも抜管時に加圧は行われず。
患者背景をみてみると
・中央値66歳のほぼ男性(67%)、緊急症例が65%。
・初日のAPACHE2スコア中央値25。
・挿管は中央値0.585日で、抜管前PF比中央値が約250。
・滞在中央値が2日、抜管後のICU滞在中央値が24時間。
結果は、対照群でオッズ比0.77(95%CI 0.6-0.98, p=0.032)であり、複合アウトカムを23%軽減させた。
個人的解釈は…
・緊急と定例手術に対応する典型的Mix ICU。そこに入院する患者群は、APACHE2が25で予想死亡率40%が中央値なのに、挿管の中央値が2日となっていることから、挿管に対する閾値が低めで、日本だとHCUに行くド重症ではない患者(例えば緊急手術のアッペとか)もICUで受け入れて早期に抜管コースとなっていると推定される
・複合アウトカムかつ、NIV/FHNCの使用ルールが明示されておらず抜管医の主観が入った可能性があることや、吸引抜管が閉鎖回路を使用しておらずPEEPを奪った可能性があるため、オッズ比0.77はそのままの数字では受け取らないほうがいい
・試験結果は有益性はなさそうであり、プラクティスとして吸引抜管をルーチンとする理由はない(直前のFiO2 100%投与が吸収性無気肺を起こしている可能性などを考慮すると、もしかするとある特定の患者では吸引抜管で恩恵が受けられるのかもしれないが、この患者を特定はできない)
NPPVで痰を押し込む?
抜管直後にNPPVをつけようとすると、「NPPVだと痰を押し込む」と言われることがある。
そもそも、抜管後の再挿管を予防するエビデンスが強い以上、痰を押し込んでいるということがなさそうなものであるが、本当にそうなのか?
結論的には、痰を押し込むかは不明。
喀痰を出す能力があれば気にしなくて良い。
これはユニークな研究があり、嚢胞性線維症の患者を対象に、理学療法士が喀痰排出を促したところ、マスク vs CPAP vs NPPVのいずれも喀痰排出量は変わらなかった(Respir Care . 2006 Oct;51(10):1145-53.)。
押し込んでいるかはわからないが、排出できれば押し込んでも良いはずである。
よって、咳嗽力が十分と評価しているのであれば、自信をもってNPPVを使用すべきである。
コメント
・自分は吸引抜管も加圧抜管もこれまでしたことない(抜管前のチューブ内と口腔内の吸引はする)。見ていると心臓外科医と麻酔科医は加圧抜管が好きな人が多いように思う。麻酔科医に関しては、ミラー麻酔科学に加圧抜管を推奨する文言があることが原因のように思う(日本臨床麻酔学会誌 2018 年38巻2号p.176-182)。
・フェロー初期のごく若かりし頃は抜管前に酸素100%にするのをルーチンとしていたが、偶然師匠に見つかって「それ意味あんの?それでだめな人は、100%にしてたって駄目じゃん?」と言われて、明快な答えを出せなかったことからきっぱりやめてしまった。その後抜管後のHFNCやNPVというバックアップが出現してきて、ある意味抜管後も酸素化を担保できる手段を得たので、なおさら抜管前の酸素投与は意味ないかもしれない。
・INNOVATE trialのDiscussionでは、”本試験実施[2019年]当時、当施設ではNIVまたは高流量療法への抜管が標準治療ではなかったため、実用的な方法で本試験を実施することが可能であった”という記載あり。今まで勤務した施設は恵まれていたんだなあと思う次第。
・患者群は違うので、なんとも言い難いが、2つの研究を結びつけると、なにもせずただ抜管>吸引抜管=加圧抜管という感じ。
・加圧抜管すると、確かに喀痰がよく出てくるような気がする。が、普通に抜管してもいっぱい出てくる人はいるし、抜管直後にいっぱい出ることが医療者にとって心地よいこと以外に意味があるのだろうか…そして何より加圧中の患者さんが苦しそうなのがなんとも言えず…今後の研究次第ながら、ジャクソンリー回路を開封してまで加圧抜管をすることはしばらくないだろう。
参考文献
Andreu M, Bertozzi M, Bezzi M, et al. Comparison of Two Extubation Techniques in Critically Ill Adult Subjects: The ExtubAR Randomized Clinical Trial. Respir Care. 2022;67(1):76-86.
Prazak J, Schenk NV, Schefold JC, Bachmann KF, Berger D. Effects of Preoxygenation With Intratracheal Suctioning During Extubation: An Alternating Cluster-Controlled Trial (INtratracheal suctioning and oxygenation AT Extubation [INNOVATE]). Crit Care Med. 2025;53(11):e2179-e2190.
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