ぼくのかんがえたさいきょうのぱーる(経験則)
1. 思考は原因、結果、未来に回帰せよ
患者のプロブレムを見つけた時、鑑別疾患への対応、プロブレムへの治療、プロブレムの予防の3つの軸で考えると思う。
それを言語化すると、原因・結果・未来である。
普段からこの3つに切り分けて思考しておくと、パニック時に困らない。
例えば院内心停止では、リーダーは手を動かさず戦略を練ると思うが、
・原因について→原因検索
・結果について→ACLSの実施を監督
・未来→想定される原因に基づき、この場の蘇生継続か?蘇生した後はどうする?
未来がよくわからない時は原因と結果から類推、原因がわからなければ結果から類推とそれぞれ補完の役割をもつ。
2. 心タンポナーデの正診率は5%でよい
ICUで稀によくあるのが、心臓外科術後の低血圧で心タンポナーデでは?と疑う瞬間だ。術後はエコーが描出困難か、あるいはビューが一部でかすかに心嚢液が貯留していそうに見えるだけ、ということが多い。この時、心臓外科医が「止血は大丈夫」という申し送りを安易に信用して、”心タンポナーデではない”と棄却してはならない。心タンポナーデは臨床診断であり、事前確率が棄却してよいレベルを下回るまで鑑別から落とさない。意見具申のための傍証収集のために経食道エコーやCTの実施も閾値を下げる。
ここでは、心タンポナーデを例にあげたが、これは何でも良い。
眼の前に救命できる手技があるのに鑑別にあげなかったために行われなかった、ということを避けなくてはならない。私も心タンポナーデかも、としょっちゅう騒ぐが、正診率は5%を余裕で下回ってると思う。棄却域値が低い疾病は軒並み正診率が下がるが、それでいい。
3. 治療手段は治療目的に従う
目的が救命ならば、(実行可能な環境ならば)必要なときにECMOを導入したらいい。
目的が緩和ならば、心肺蘇生を行う適応はない。
まず治療ゴールの設定を行う。
それは事前意思でもいいし、代理意思決定者とでもいい。
そのゴールが達成可能だと判断すれば、ゴール達成に必要なことを医学的判断に基づいて選択する。ゴールが医学的に達成不可能ならば、2nd bestのゴールを設定する。
目的を設定することなく、挿管どうしますか?電気ショックどうしますか?と患者に聞いてはならない。
4. 大切なことは何度も繰り返してよい
師匠に言われた言葉。師匠も、その師匠に言われたらしい。
主に教育フェーズで思い出す。
学年が上がるたびに、毎年毎年この言葉を思い出す瞬間が頻繁に訪れる。
この繰り返す姿勢が教育、組織づくり、文化の醸成につながる。
5. 鑑別診断の末尾は必ず常に”私の診断が間違えている”である
プロブレムが表現型なら、鑑別疾患が必要である。その鑑別疾患は、自身の確信度によってグラデーションを描く。ときに間違った確信によって鑑別疾患を間違えることがある。間違えた経験を振り返ることは、長期的な正しい直感の養成に役立つ。
さらに、正しい問題設定する能力と問題解決能力は集中治療医の必要な能力としてトッププライオリティだとおもう。
6. 単一の指標で判断しない
CVPが、IVCが、PAWPが、Lactateが…
どれでもいいが、どれか1つを判断の根拠とすると大きな落とし穴にハマる。
適正な体液量など、単一の指標は存在しない。
判断したのが他者であったときも、それは他者という単一の指標であるため用心するべきである。
偶然治療がうまくいくと、誤った成功体験となるため修正しにくいので、最初から複数軸で判断するクセを付けておく。
7. 配られたカードで勝負する
患者の救命がうまくいくかは、自分の能力だけではない。
自分と一緒にいた医師、技師、看護師などの能力にも大きく影響される。
これはある意味、運と言える。
枠の高さがバラバラの水桶は、一番低い枠がボトムラインとなる。
絶対にこうする、と決め打ちするのではなく条件が変わればそのプロセスを変える柔軟性も必要。同じ条件で勝負することのほうが低いので、「いつもなら〇〇!」と怒っても仕方ない。全てのエラーはシステムのエラー。同じ条件で勝負できるように普段から準備(周囲の教育とプランBを立てる訓練)しておかなかった自分に怒れ。
8. 何もしないことは悪ではない
そのSpO2、その輸液、そのCHDF。自分の不安を治療してないか?
9.集中治療科の最大の顧客は他科
医師の最大の顧客は患者であるが、集中治療医という立場では他科である。
顧客のかかえる課題、その解決策、顧客が感じる解決の価値を評価しなければならない。
他科に嫌われると、患者を任されない。
これは、病院・患者・他科・自分、全ての人が不幸になる。
ただし、顧客といっても全てをYesというのではなく、飲めない要求のときには顧客をなだめたり、突き動かしたり、押し引きのメリハリをつけること。
1つ注意点は、最大の顧客が他科、ということを実際に口に出すと(病院の理念とかち合うなどの理由で)上層部に睨まれる可能性があるので、公言するには注意が必要。
10. 家族や患者が「何でもやってほしい」と言うとき、それは何が何でも命を助けてほしいということではなく、むしろ自分たちを見捨てないでほしいということである
前にパールを紹介した時に出てきた。患者の家族もまたケアの対象である。医学的に救命困難、あるいは広義の終末期となった患者の家族の多くが言うフレーズだが、文面どおり”全ての医療行為を行う”と解釈してはならない。やれることをやった結果、患者が死ぬよりも酷い目にあうことがある。医師も、コメディカルも、そして家族さえも、”こんな治療は自分だったら嫌だ”という治療は、もはや治療と呼ばない。ただし、世の5%くらいの人は到底自分が理解できない価値観を持っている。まさに文面通り(あるいはそれ以上)の全てを要求する家族もいるし、主科の医師も何も考えずに実行してしまうことがあるので、ケース・バイ・ケース。
11. 将来に渡って、あなたは成長する
年齢が上がると、成長が鈍化するが、成長には違いない。
人が急激に成長するには、3つの要素があると思っていて、
①成長曲線の初期
②自ら失敗をして、適切に振り返りができた
③周囲の環境で破壊的イノベーションが起きた
年をとると成長が鈍化するのは、成長曲線が後半、失敗が少ない、自分のいる組織に長くいてすごいエビデンスがでることもなく周囲にイノベーションが起きないからである
その上、年を取ると更に厄介なのが、マイナス要素の存在である
①物覚えが悪くなる
②バイアスにかかって自分の行動が見直せなくなる
③管理業務が増えると勉強する時間が減る
というわけで、昨日の自分が知らなかったことを、1つでも得ることができれば立派な成長である。筋肉と一緒で、ゆっくりとしか増えないと心得る。
個人的観察によると、年齢が更に上がると、勉強することは、成長ではなく退化の予防という側面が大きくなる様だ。学び続ける姿勢は疲れてしまうので、仕組み化するのが楽(毎日学びを求めて、回診のときに”最近のICMのトピックでなにか面白いものあった〜?””◯◯って自分でもよくわからないから今度解説してくれる?”って聞くとか。そのうちみんな週刊誌を読むようにICM読み出す)。
12. 人間関係、金、筋力のストックがあなたを救う
人生でぶち当たる3大メインプロブレムが人間関係、金、健康なので当然といえばそう。
集中治療医が成長するためには、症例数×フィードバック×自己勉強の総和が最大になる必要があるが、最大化するためにも人間関係・金・筋力(健康)が必要になる。
ただし、フェーズ毎と価値観で補正が必要なため、普遍的なソリューションはない。
若い時のほうが健康に気を使わないで済む事が多く、後々レバレッジが効くようになることを考慮すると、若いときほど人間関係≧金>筋力で、年とともに逆転する感じか。
50歳くらいになると、子育てなどで色々と用入りとなり、医業は労働集約型産業のため体力・健康の重要性も上昇する。
あなたが若くよくわからんかったら、人を飲み誘え、連絡まめにしろ、NISA口座開いてオーカン積み立てろ、歯のフロスを毎日して6ヶ月毎に歯科健診行け(6ヶ月毎意味ないってコクラン・レビューが言ってるとかいうな)、ということだろうか。
コメント:
改めて言語化すると、年食ったなと思いました。
諸事情によりしばらく集中治療回診しなくなります。
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